5

お母さんの似顔絵を
たのしく書いていたら
窓をやぶり憲兵が四人なだれこんできた
「お前、落書きしたな」
ウィニーもやったな」
「さぼったな」
騒音おばさんだな」
お母さんはこっちを見ないようにして
青ざめた顔で
たまねぎを切っている
ぼくは悲しくなって
「たのしいなんてほろびればいいのに」
とつぶやきました
すると
植草教授にそっくりの憲兵が答えた
「おまえで最後だ」
ぼくは連行されていきます
たのしいは
終わります
みかんの皮をむいたり
好きなひとを抱きしめたりできません
そんなもの
もう絶滅したのです
たのしいが
ほろびたのです
だから
騒音おばさん
殺人犯より
世間的に罰せられるのです